12月28日は、ライムスター宇多丸さんと森井勇佑監督のアフタートークを実施しました!
後半にはハル役の大沢一菜さんも飛び入り参加。トークの一部を抜粋しました。
■原案は中尾太一さんの詩集
「詩集を読み終わったとき、ざわざわとした感覚があって。いろんな“ざわざわ”が聞こえる感覚を、まるごと映画にしたいと思いました」(森井監督)
「森田芳光監督も、原作を映画化する時に大事にしているのはあらすじを追うというより、“読み終わった後の感じ”を再現することだとおっしゃっていて。『ルート29』もそういう映画化ですよね」(宇多丸)
■のり子役/綾瀬はるかさんについて
「森田監督の『家族ゲーム』に松田優作が出たように、こういうアートムービー的な作りのものに綾瀬さんのようなメジャーな人をキャスティングすること、そこでしか生まれないマジックがありました」(宇多丸さん)
「よく考えると、のり子という不思議なキャラクターを説得力をもって演じられる人ってなかなかいない。綾瀬さんは目が不思議で、どこを見ているのか独特な空気があって。撮りながらずっと興味を持ち続けていました」(森井監督)
■ハル役/大沢一菜さんについて
「大沢一菜は、カメラを向け続けたくなる感じがある。『こちらあみ子』をやった後に、どこか描き足りない気持ちがありました。それはあみ子というより、大沢一菜そのものに対して、です。もう1つできることがあるんじゃないかなと思っていました」(森井監督)
「先ほど控室でも大沢さんが監督をずっといじり続けていて、ハルは大沢さんじゃん!と(笑)。この2人の様子を撮るだけで、短編映画が1本できるぐらいの面白さ」(宇多丸さん)
■国道沿いのマジックリアリズム
「『ルート29』は、生きている・死んでいるのお話ですよね。生きている人は死んでいるみたいだし、死者がフラットに存在している。本作を観て最初に連想した映画が、タモリさんが主演した映画『キッドナップ・ブルース』(82年/浅井慎平監督)。タモリさん演じる中年男と少女が旅をして、途中で奇妙な人々と出会う。現実世界の話に見えるけど、そうじゃないという撮り方をしているんです」(宇多丸さん)
「実際に国道29号線を旅しながら脚本を書いていったのですが、どこか霊的な雰囲気の道なんですよ。
これは面白いものが撮れそうだなと思いました」(森井監督)
■日本でロードムービーを撮るということ
「日本の街並みって、端的に言うとカッコよくならない。監督の皆さんは、そこをどう撮るかで作家性が出ると思う。
今回はある意味、方法論として全編にやってみせた感じがします」(宇多丸さん)
「車を飛ばせば3時間ぐらいで着くような国道で、寄り道や迂回をしながら、いかに長く感じさせるか、旅した感覚を味わってもらえるかは、挑戦として面白いなと思いました。どう切り取っても画にならないだろうというイメージから脱却し、切り取り方次第で面白くしたかった」(森井監督)
■平面性への熱い憧れ
「『ルート29』の面白いところは、セットのような作り込まれた場所ではないのに、画面が全部構築的なんです。普通の景色を撮っているんですが、左右対称の撮り方、人物は絶対に真ん中にいるなど、全カットどこか人工的。日本映画にしては珍しく、面白いですね」(宇多丸さん)
「奥行きではなく“平べったさ”に対しては思いがあるんです。平面性への熱いあこがれというか、ペラッとした絵を撮りたいんです。自分が子供の時に見た『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』、スーパーファミコンにも少なからず影響を受けているのかもしれないです。ただ普通に撮ると奥行きが出てしまうので、何かひとつでも手を入れたいということは意識しました。一手入れないと気が済まない」(森井監督)
■『ルート29』の“気持ち悪さ”
「のり子とハルのかわいらしさと同時に、“気持ち悪さ”も描きたいと思いました。それを肌感覚でわかるようにしたかった。亜矢子の家の2階、薄暗い中でのり子とハルが布団に入りながら顔を見合わせて会話するシーン、僕的には気持ち悪くて好きなんです」(森井監督)
「マンホールが開いていて、石を落としてみたら、現実離れした深さで……というシーンも怖かったですね。まるで現実にポッカリ黒い穴が空いているような不穏な感じは、『こちらあみ子』でもそうだったな、と」(宇多丸さん)
〜大沢一菜さんが飛び入り参加〜
■脚本を読んだ時の感想
「監督っぽいなと思いました。人を傷つけたりしないところ、優しい言葉をかけるところが監督らしいなって」(大沢さん)
■森井監督との再タッグ
「監督は“負けてる”。全体的になめられてる感じがする(会場爆笑)」(大沢さん)
「なめられにいってるのよ」(森井監督)
「監督、それ素敵です。今の時代、威張っている監督はだめです。負けてるぐらいがちょうどいい!(笑)」(宇多丸さん)
■3度目のタッグなるか!?
「『こちらあみ子』公開の時に一菜と回った舞台挨拶で、「次回一緒にやるなら?」の質問が結構出て、
その時に一菜は“冒険ものをやりたい”と言っていたんです。それを意識して『ルート29』を作ったのもありました」(森井監督)
「次は戦闘ものやバトル系……あ、でもルートの続編でもいいです。のり子が刑務所で急に豹変して脱獄して、ハルと合流してバンバンやっちゃう話がいいです(会場爆笑)」(大沢さん)
ご来場ありがとうございました!